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Textile Industry Column糸偏コラム:自由な視点
私の回顧録

2026.03.25:第99回 私の回顧録

グループ企業
〜リアルな現場23〜

みなさん。こんにちは。

前回のコラムでは、「オーダーシャツの縫製工場」についてお話ししました。 スーツ工場とは異なり、「ロスよりも効率を優先する」という考え方に、当初は違和感を覚えたという内容でした。

同じ“縫製工場”という枠の中にあっても、求められるものが違えば、その最適解も大きく変わる―― そうした現場ごとの考え方の違いや、ものづくりの裏側にある判断基準について、少しでも感じていただけたのではないかと思います。

そして今回は、その流れを受けて、これまでお話ししてきたすべてを振り返る **「グループ企業全体の総集編」**としてお届けしたいと思います。 点で見てきたものを、線としてつなげていくような回にできればと思っています。

グループ企業

◾️ 振り返るための年表整理

ここで、これまでの流れを簡単に整理してみます。

2000年:神田の生地卸売業に入社
2004年:フルオーダー縫製工場がグループに加わる
2011年:オーダースーツチェーン店・縫製工場・シャツ工場・リフォーム事業が加わる
    →さらに北京の縫製工場と合弁(のちに解消)
2015年:オーダースーツ縫製工場が2拠点増加

こうして並べてみると、単なる企業の成長というよりも、 **川上の素材から、最終製品、さらには販売までを一貫して担う“ものづくりの集合体”**であったことが分かります。

それぞれのタイミングで新しい機能や役割が加わり、 グループ全体としての幅や深さが増していった過程でもありました。


◾️ 私が見てきた「リアルな現場」

今回お伝えしたいのは、単なる企業の変遷ではありません。

その中で私自身が見てきた、 **「現場の空気」「人の動き」「仕事のリアル」**です。

本体は生地の卸売業でしたが、グループ企業との関わりの中で、 さまざまな立場・役割・価値観に触れることができました。

一つひとつの現場には、それぞれの論理があり、 それぞれの正しさがありました。

それが、今振り返ると単なる経験ではなく、 自分の中に積み重なった“判断の基準”のようなものになっていると感じています。

判断基準

◾️ フルオーダー工場で見た職人の世界

フルオーダーの縫製工場では、フィッターの方が店舗に来て採寸を手伝う姿を見てきました。

仮縫いを前提としたものづくりは、効率とは真逆にある世界です。 時間も手間もかかりますが、その分、一着一着に対する向き合い方の深さは圧倒的でした。

また、見習いとして入社してくる若い方々の姿もありました。 最初は戸惑いながらも、少しずつ技術を身につけていく様子は、とても印象に残っています。

そこには、「早く作る」ではなく、 「良いものを作るために時間をかける」という価値観が確かに存在していました。


◾️ 若い職人たちが持っていた“気概”

彼らがどんな想いでこの世界に入ってきたのか。

・ 洋服が好きだったのか
・ 手仕事に魅力を感じていたのか
・ 何かを生み出すことに惹かれていたのか

ただ一つ共通していたのは、 “気概”のようなものでした。

簡単ではない道を、それでも選んで進んでいく。 効率だけでは測れない世界に、自ら飛び込んでいく覚悟。

その姿には、どこか静かな強さと、 自分の仕事に対する誇りのようなものを感じていました。


◾️ 自分自身と重なった感覚

私自身も、仕事に対して似たような資質を持っていたと思います。

効率や損得だけでは動けない部分。 どこかで「やりきる」という感覚。

目の前の仕事に対して、理由をつけて手を抜くのではなく、 納得できるところまでやりたいという気持ち。

そうした部分で、彼らに共感するものがありました。

現場で感じるこうした“感覚”は、言葉にしづらいですが、 長く仕事を続けていく上で、とても大切な軸になるものだと思います。


◾️ チェーン店で見た別のリアル

一方で、オーダースーツのチェーン店は、まったく違う世界でした。

規模としては、本体の生地卸を上回るほどの売上・人員を抱えており、 ビジネスとしての迫力を強く感じる現場でした。

多くの店舗、多くのスタッフ、多くのお客様。 日々の現場は常に動いており、その中でスピード感のある判断が求められます。

そこには、職人の世界とはまた違った、 **“経営と現場が直結している緊張感”**がありました。


◾️ 店長やスタッフの“ジレンマ”

現場で接していた店長やスタッフの方々とは、非常に良い関係を築くことができました。

本来であれば指導する立場だったのかもしれませんが、 実際には、彼らの抱える悩みや葛藤を感じ取る場面も多くありました。

・ 売上と品質のバランス
・ 顧客満足と効率の両立
・ 会社方針と現場判断の狭間

それぞれが簡単に答えの出る問題ではありません。

その中で日々判断し、結果を出していく姿は、 とても現実的で、そして強さを感じるものでした。


◾️ お客様との向き合い方

その経験を通じて感じたのは、 やはり最終的には**「お客様への姿勢」**がすべてにつながるということです。

どれだけ環境が変わっても、 どれだけ状況が厳しくても、

真摯に向き合う姿勢は、必ずどこかで評価されます。

その積み重ねが、 会社としての信頼となり、 個人としての信用にもつながっていく。

シンプルですが、とても本質的なことだと感じました。

信頼

◾️ スーツ工場への想い

オーダースーツの縫製工場については、 日本の技術力と合理性の両方を兼ね備えた存在だと感じています。

精度の高さと、量産への対応力。 一見すると相反するような要素を、バランスよく成立させている。

それは簡単なことではなく、 長年の積み重ねによって成り立っているものだと思います。

今後も、その価値を大切にしながら発展していってほしいと感じています。


◾️ 時代とともに変わる現場

ただ、時間の流れとともに、現場も変わっていきます。

・ 責任者の交代
・ 担当者の退職
・ 組織の変化

かつてやり取りをしていた方々の名前が、少しずつ聞かれなくなっていく。

それは自然なことではありますが、 やはりどこか寂しさを感じる部分でもありました。

現場は常に動いており、 同じ状態で留まり続けることはありません。


◾️ シャツ工場での別れ

オーダーシャツの工場でも同様でした。

インポート生地の仕入れを引き継いだ方が退職されたという話を聞いたとき、 ふと、ひとつの区切りのようなものを感じました。

人が変わることで、現場の空気も変わる。 それまで当たり前だった流れが、少しずつ変化していく。

それが、現場というものなのだと思います。


◾️ 中国合弁での出会い

中国の合弁企業で関わった方々も、非常に印象深い存在です。

言葉や文化の違いを越えて、 同じものづくりに向き合う時間は、特別なものでした。

最初は戸惑うこともありましたが、 仕事を通じて少しずつ理解が深まり、関係が築かれていきました。


◾️ 国境を越えたつながり

国が違っても、立場が違っても、 同じ目標に向かって仕事をすることで、自然と関係が生まれていきます。

その一つひとつが、今振り返ると大切な記憶です。

単なるビジネスの関係ではなく、 人と人とのつながりとして残っていることが、何よりも印象的です。

この場を借りて、改めて感謝の気持ちを伝えたいと思います。 本当にありがとうございました。


◾️ まとめ(核心)

今回の総集編を通じて、改めて強く感じたことがあります。

それは―― **「仕事の本質は人である」**ということです。

どれだけ仕組みが整っていても、 どれだけ効率化が進んでも、 最終的に判断し、動かし、形にするのは人です。

そして、その人の考え方や姿勢が、 そのまま仕事の質として現れていきます。

これまで見てきたすべての現場には、 それぞれの正解がありました。

しかし、その正解を作っていたのは、 いつも「人」でした。

だからこそ、出会いと別れの一つひとつが、 何よりも価値のある経験になります。

この経験は、これからも必ず生きていく。 そう強く感じています。


◾️ 次回へ向けて

グループ企業〜リアルな現場〜のシリーズは、今回で一区切りとなります。

そして次回は、いよいよ第100回という節目の回です。

2000年から2020年まで在籍した、生地卸売業での20年間。 その時間の中で経験したことを、改めて振り返っていきます。

一つの仕事として、最も長く関わった場所です。 ぜひ、最後までお付き合いください。



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