TexStylist

Textile Industry Column糸偏コラム:自由な視点
私の回顧録

2026.03.30:第104回 私の回顧録

中国縫製の日本営業3
〜ウェブサイト開設〜

みなさん。こんにちは。

前回のコラムでは、中国縫製工場との取引において、 「仕組みがなければ意思の疎通はできない」という現実についてお話ししました。

文化や言語の違いは、表面的には大きな壁に見えますが、 実際にはその奥にある「考え方の違い」や「前提の違い」こそが、本当の難しさでした。

それらを乗り越えるために必要だったのは、 感覚や経験ではなく、「共通言語としての仕組み」でした。

そして、その答えとしてたどり着いたのが、 工場と受注書をつなぐ“採寸マニュアル”の整備でした。

しかし、ここで一つ大きな壁にぶつかります。

それは、 「仕組みを作ったからといって、すぐに現場が変わるわけではない」 という現実でした。

工場側には工場側のやり方があり、 長年続けてきた方法を簡単に変えることはできません。

むしろ、「今まで通りでやりたい」という意思の方が強く働き、 せっかく作ったマニュアルも、思うように活用されない場面が多くありました。

正直に言えば、 「ここまでやったのに…」という悔しさや、もどかしさを感じる瞬間も少なくありませんでした。

それでも、営業としての役割は変わりません。 「受注を増やし、取引を前に進めること」

そのためには、別の角度からアプローチする必要がありました。

そこで私は、次の一手を考えました。

今回のテーマは、 「信頼ゼロからどうやって新規取引を生み出すか」 そして、 「“見せ方”で信用を作るという営業戦略」 です。

ウェブサイト開設

◾️ 信用がある取引と、ゼロからの違い

これまでの取引は、ある程度の土台がありました。

最初に紹介した取引先は既存顧客。 前回の取引先は紹介案件。

どちらも、「信用」という最初の関門をクリアした状態からのスタートでした。

どちらも、「信用」という最初の関門をクリアした状態からのスタートでした。

つまり、スタートラインに立った時点で、 ある程度の安心感や期待があったのです。

しかし今回取り組むのは、まったくの新規開拓です。

・ 実績もない
・ 関係性もない
・ 信用もない

完全なゼロからのスタートです。

この違いは、実務以上に心理的なハードルとして大きく、 「話を聞いてもらえるかどうか」から始まる厳しさがありました。


◾️ 営業として最初に考えたこと

では、何から始めるべきか。

私が最初に考えたのは、 「まずは信用してもらうこと」 これに尽きました。

いくら価格が良くても、 いくら縫製技術が優れていても、

「よくわからない会社」には、誰も仕事を出しません。

それは当然のことであり、 逆に言えば、ここをクリアしなければ何も始まらないということでもあります。

だからこそ、まずは“安心できる存在”になること。 これが最優先の課題でした。

信用

◾️ 「中国縫製を知ってもらう」という発想

さらにもう一つ考えたことがあります。

それは、 「中国の縫製工場そのものを理解してもらう」 ということです。

単に営業として売り込むのではなく、 相手の不安を一つ一つ解消していく。

そのためには、 正しい情報を丁寧に伝えることが必要でした。

漠然とした不安は、情報がないことから生まれます。 だからこそ、情報を可視化することに意味があると考えました。


◾️ 最初に取り組んだ“会社案内づくり”

そこでまず着手したのが、日本語の会社案内の作成でした。

中国側が使用している資料はありましたが、当然ながら中国語です。

そのため、それを入手し、 翻訳ソフトを使って日本語に変換するところからスタートしました。

しかし、単なる直訳では意味が伝わりません。

表現を整え、 日本人が読んでも違和感のない言葉に置き換え、 必要に応じて補足を加えながら仕上げていきました。

この作業は、単なる翻訳ではなく、 「伝わる形に再構築する作業」でした。


◾️ 写真と“見える情報”の重要性

さらに、文章だけでは伝わらない部分もあります。

そこで、工場の写真や設備の画像データも収集しました。

・ どんな工場なのか
・ どんな設備があるのか
・ どのくらいの規模なのか

こうした“見える情報”は、 読む情報よりも直感的に伝わります。

そして何より、 「ちゃんとした工場なんだ」という安心感につながります。

この視覚的な情報の力は、想像以上に大きいものでした。


◾️ 自分で作るという選択

ここでも外注はせず、 採寸マニュアルと同様に、自分で制作することにしました。

理由はシンプルです。

「自分が一番伝えたいポイントを理解しているから」

外部に依頼すれば効率は上がるかもしれませんが、 ニュアンスや意図がズレる可能性もあります。

それよりも、自分で作ることで、 伝えたい内容をダイレクトに反映できると考えました。


◾️ 協力者とともに進めた新規開拓

そして、知り合いの機屋さんと連携しながら、 新規取引先の開拓をスタートしました。

一人で動くのではなく、 これまでの人脈や信頼関係を活かす。

これは、ゼロからの営業において非常に重要なポイントです。

小さなつながりでも、それがきっかけとなり、 新たな道が開けることもあります。


◾️ いきなり訪問しないという判断

営業といえば訪問、というイメージもありますが、 今回はまずメールや電話からスタートしました。

理由は明確です。

「いきなり行っても、相手は受け入れてくれない」

特に新規の場合、 事前情報なしで訪問するのはハードルが高すぎます。

まずは存在を知ってもらい、 少しずつ認識を高めていく。

そのステップを踏むことが重要でした。

ステップアップ

◾️ それでも越えられない“信用の壁”

しかし、現実は甘くありません。

資料を送っても、説明をしても、 すぐに信用につながるわけではありませんでした。

やはり、 「実体が見えない」という不安は大きく、

“本当に大丈夫なのか”という疑問を完全に払拭するのは簡単ではありませんでした。

ここに、新規営業の難しさがありました。


◾️ 次の一手「ホームページ」という発想

そこで考えたのが、日本版のホームページの制作でした。

今の時代、何かを調べるときはまずネット検索です。

検索して情報が出てくるかどうか。 それだけで、相手の印象は大きく変わります。

「ちゃんとした会社かどうか」 その判断材料になると考えました。


◾️ “存在証明”としてのウェブサイト

ホームページは単なる情報発信ではありません。

それは、 「この会社は実在している」 という証明でもあります。

特に海外企業の場合、 この“存在証明”の有無が、信用に直結します。

見える形で存在すること。 それ自体が価値になるのです。


◾️ 自分の経験を活かす

私自身、これまでにいくつもホームページを作ってきました。

そのため、 「材料さえあれば作れる」 という自信がありました。

ここでも外注ではなく、自分で作る選択をしました。

時間はかかりますが、 自分の意図をそのまま反映できるという強みがあります。


◾️ 資料収集とプロモーション動画

工場に依頼し、 使用可能な資料や画像、動画を送ってもらいました。

届いたデータは非常に多く、 その整理だけでも一苦労でした。

その中でも特に重要だったのが、 プロモーションビデオでした。

工場の雰囲気や規模感を、 一番リアルに伝えられる素材だったからです。


◾️ 翻訳の壁と格闘した時間

動画の翻訳は想像以上に大変でした。

音声認識ソフトを使っても、 BGMの影響で誤認識が起きたり、 途中で途切れたりと、スムーズにはいきません。

それでも何度も聞き直し、 少しずつ修正しながら、形にしていきました。

まさに地道な作業の積み重ねでした。


◾️ 固有名詞という見えないハードル

特に苦労したのが固有名詞です。

そのまま翻訳しても意味がわからず、 一つ一つ確認しながら理解していく必要がありました。

この作業は時間がかかりましたが、 結果として内容の理解を深めることにもつながりました。


◾️ ホームページ構成の設計思想

サイト構成は約1週間で設計しました。

重要なのは、 「何を載せるか」ではなく、 「どう見せるか」です。

情報を整理し、 ユーザーが迷わない構造を意識しました。


◾️ 全体構成とコンテンツ設計

サイトは以下の構成にしました。

⚪︎トップページ ⚪︎お取引ガイド ⚪︎商品ラインナップ ⚪︎縫製工場 ⚪︎店舗情報

それぞれの役割を明確にし、 必要な情報にすぐたどり着ける設計にしました。


◾️ 最も力を入れた「お取引ガイド」

中でも最も力を入れたのが「お取引ガイド」です。

ここが、 興味を持った段階から、実際の取引へ進むための“橋渡し”になると考えました。


◾️ 不安を解消する導線設計

お取引ガイドには、 採寸マニュアル・納期・在庫情報をまとめました。

これにより、 取引前に感じる不安を具体的に解消できる構造にしました。

「わからない」を減らすことが、信頼につながると考えたからです。


◾️ 3ヶ月かけて完成した“営業ツール”

制作には約3ヶ月を費やしました。

決して楽な作業ではありませんでしたが、 完成したときには確かな手応えがありました。

「これなら伝わる」 そう思えるものができたことは、大きな前進でした。


◾️ まとめ

今回の取り組みを通して強く感じたのは、 「信頼は自然に生まれるものではなく、意図的に作るもの」だということです。

営業という仕事は、人と人との関係で成り立つものです。 しかし、その関係を築くためには、土台となる“材料”が必要です。

会社案内、写真、ホームページ―― それらはすべて、相手の不安を減らすための手段です。

そして、それらをどう見せるかによって、 伝わり方は大きく変わります。

また、「ないものは作るしかない」という現実もあります。

完璧な環境が整っていることは少なく、 むしろ足りないものの方が多いのが現実です。

その中で、どうやって前に進めるか。

それを考え、行動することこそが、 営業としての価値なのだと感じました。


◾️ 次回予告

次回は、ホームページ完成後の反応と、 実際にどのように取引へとつながっていったのかをお伝えします。

現場で起きたリアルな変化を、 一つの仕事にフォーカスして深掘りしていきます。

ぜひ、次回も楽しみにしていてください。



◀︎◀︎◀︎ 【2026年3月29日】         【2026年3月31日】 ▶︎▶︎▶︎

コラムのトップに戻るには、こちらの糸偏コラム:自由な視点クリック